ポータル2 公式サイト
アマゾン
レビュー日:2011年6月27日
プレイ時間:15時間〜20時間程度(ストーリーモード・協力モード共にクリア)
グラフィック:★★★★
5.1ch対応度:未レビュー
Live:COOP対応
総評:★★★☆
前作が世界中で凄まじく評価されたファーストパーソンパズル。一人称視点でのシューティングではなく、パズル。
前作「Portal」はいわゆる「脱出系」の世界の中で、主人公は理不尽な世界の謎を明かしつつ脱出を目指す。
プレイヤーが使えるのはPortalガンというA地点とB地点を強制的にくっつけるワープ装置のみ。あとはステージの仕掛けを利用してパズルを解いていきます。
と、説明するといまいち面白くなさそうなのですが、前作が評価されたのはゲームとしてあらゆる完成度が高かったため。
出来ることがワープだけ、というと物足りないイメージですが、例えば高所からワープインすると加速度を付けた状態でワープアウトできたり、
ワープホールに人体だけでなく、物質やレーザーなどを通せたりと応用方法が多彩。
また、パズルゲームとしてのデキもさることながら、ストーリー・世界観・キャラクター等のマッチが絶妙で非常に先が気になる展開が待ち受けます。(おまけに、日本人も驚愕の謎の萌え要素も。)
未プレイの方はネタバレを避けてさっさとプレイするべき。パズルゲームがここまで騒がれた理由が分かるはず。
プレイヤーの大半がパズルゲームファンでは無かったと思われますが、それでもこれだけのファンが付いたのは単にゲームとして面白かった以外にありまえせん。
そんな前作ポータルはFPSの大作、HALF-LIFE2とTeamFortless2のまとめパッケージ「ORANGE BOX」の特典、というような形で世に出たソフトでしたが、
どっちかというとHALF-LIFE2やTeamFortless2すら霞ませてしまう、衝撃的かつ濃密な作品でした。
そして、そんな神ゲーの続編として期待を背負って発売されたのがポータル2。
オマケ扱いから、堂々のパッケージソフトに。
で、内容はというと
・グラフィックは時代なりに進化。世界観の表現に大きく貢献しています。
・パズルは相変わらずポータルガンしか使えないものの、新たな環境要素が色々と追加。パズルはより多彩に。
・ストーリーはあの前作の続き。正直コレだけで買わない要素が無い。
・COOP(協力プレイ)モード追加。オフラインの画面分割、XboxLiveに対応。
と、奇をてらわないまさに正統進化。前作通り、シンプルなところは変わらず。
で、上にも書いたとおり、ストーリーが前作の続きものです。
ゲームの難易度としては難易度の上昇曲線が緩く、かつ最初はかなりやさしいので2からの初心者を見込んでいるのは確かなのですが、
個人的に言わせていただけばPortal1を未プレイであれば2はプレイすべきではないと思います。
ポータルの魅力の大半はストーリーとキャラクターだと思っているのですが、それも1の衝撃が有ったからこそ。
2から始めるといきなり凄いことになってるので衝撃も感動も無くなってしまいます。
登場人物も1プレイしていること前提で話進めますし。何はともあれ2から始めるのはオススメしません。
PC版でもいいから1をプレイするべき。XboxLiveArcade版は日本語字幕無いらしいので注意。ストーリー重要なので字幕無いとキツイです。
(ついでに、Portal自体がHalf-Lifeの世界上の話なのでHalf-Life自体もやっておくと細かいネタが分かってベター。1はPC版しか有りませんが…)
内容については、様々な新要素はあるものの、前作をそのまま踏襲。
パズルを解きつつ、世界の謎を徐々に明かしていきます。
前作は割と狭い世界でしたが、今作は登場人物も増え、行動するフィールドは圧倒的に広くなりました。
前作同様ムービーを一切使わず、相変わらず気づいたら世界の流れに飲まれてしまっている演出が素晴らしい。
ストーリー部分とパズル部分の継ぎ目が曖昧で気づいたら外部に出てたり、とか。最近で言うとコールオブデューティシリーズみたいなシネマティック感。
登場キャラクターは前作の面々に加え、かなり性質の違う人達(?)が登場。相変わらず常識人が居ない。
パズル部分もほぼ前作を踏襲していますが、アクション性はかなり減退し、純粋にポータルの設置位置を悩むゲーム性になりました。
前作は割とアクション的にキツい部分が多かったのですが、今回は技術が必要とされる場面はほぼ有りません。
難易度は低め。少し悩めばほぼクリア出来る、スッキリ感のある難易度です。
ただ、ヒントの類が一切無いので、ポータルを作る場所に気づかないと同じところをグルグルする事にはなりがち。
今作で感心したのは音の使い方。BGMがやたらと合っているのに加えて、パズル中でも随時絶妙なタイミングでSEが挿入されます。
例えるならばゼルダの伝説で謎を解いたときにSEが流れるような感じで、長距離ジャンプするとSEが入ったり。妙な気持よさがあります。
サラウンドは…一応海外サイトとか見るとDolbyDigital5.1(PS3版は7.1ch)とはなっているのですが、ロゴは無いし、クレジットにも出てないし、会話は方向性関係なく全スピーカーから出てるし、
タレットの銃撃も方向性関係ないし、対応しているのか謎です。調べてもあんまりサラウンド情報が出てこない…
日本語化はValveゲーおなじみの字幕。やや見づらいですが、元の音声のアジは押さえています。
ただ、本当に音声部分しか字幕がないので、壁の落書きやポスター、看板等の英語情報は完全にそのまま。
Portal1でもそうでしたが、壁等の文字情報は音声とは全く違う方向の情報が載ってたりウィットに富んでいたりするのでので見落とすのは惜しい。
ゲーム中にもポスターに書いてある内容を使用した展開なんかもあったりして、読めている事前提ですし。
頑張って英語読んだほうが世界観を楽しめますが、いちいち足止めるのが面倒というジレンマ。
前作同様、よく練られたパズルに狂気が見えるシナリオ、と基本的なことは変わっていないのですが、続編なだけあって色々と複雑になったり、ボリュームが増えたりしています。
それは普通喜ばしい事なのですが、正直なところ本作のボリュームは多すぎるかな、という感想です。
Portalに何を求めるかにもよるんでしょうけれども、まずストーリーありき、という考えだとパズルを「させられている」感がかなり強いです。
特にテストチェンバー内ならともかく、建物から建物に移動する際なんかにも必ずパズル要素が含まれています。
1作目ならともかく、2作目の本作は前作で感じた斬新さはもちろん薄れてしまっているので、基礎的なパズルを何度もプレイさせられると「またか」と感じてしまうのです。
さらに、その移動シーンのパズル要素は殆どが「高所からの落下による位置エネルギーで遠いところに飛んでいく」という内容。
また、フィールドが広くなったのですが、逆にポータルが設置可能な箇所は限られているので、毎回毎回ズームしながらポータル設置可能な壁を探す作業が発生します。
暗い場所も多いので壁が見つからなくてイライラすることも。
魅力的なストーリーでプレイヤーを惹き付けはするのですが、全体のボリュームが増えた割にはパズルの新要素が少なく、密度が低く感じてしまいます。
新要素の協力プレイは2人でプレイすることによってポータルが4つ設置できることになり、パズル性はより複雑に。
1人では難しい永久落下や加速状態を維持してのジャンプが出来るようになり、1人リプレイ時とはまた違う感覚が楽しめます。
また、協力プレイ専用モードにしては珍しくストーリー要素(のようなもの)もあり、登場人物が結構喋るので
本編の関連作品として楽しめます。(時間軸としてはPortal1→Portal2シングル→Portal2マルチ)
ボリュームは本編同様、それなりにあるためパズルを心ゆくまで楽しめますが、本編に続いてお腹いっぱいなところはあり。
本編との関連性はあるものの、ただひたすら二人でテストチェンバーをクリアしていくのでアドベンチャー要素は薄く、パズルゲーム要素がほぼ全て。
2人であれこれ試行錯誤しつつ、テストをクリアできたときの達成感はもちろん有るのですが、それ以上に作業感が大きいです。
特に、パズルのネタが本編と同じなので、パズル自体はCOOP専用の新作でも、次はあの仕掛けが出てくるんだろうな…というのが読めてしまいます。
そして肝心のストーリー要素については登場人物が喋ることは喋るものの、本編のように核心に迫っていく要素はかなり薄く。
普通に協力してパズルゲームがしたい!という需要には応えている、というかそれ以外何が必要なんだという所ではあるのですが…
「ややストーリーを乗せたPortal2パズルステージ拡張パック(2人プレイ専用)」という感じなのでデキ自体はなかなか良くても、
前作は本編をクリアしただけで十分満足し、チャレンジモードとかどうでも良かった派の自分にとってはやや退屈な内容でした。
前作からのクオリティを引き継ぎ、ゲームの本質を変えずに誰もが求めた続編として登場した本作ですが、流石に前作の斬新さを超える衝撃は無かった、という感じ。
パズルゲームとしては丁寧な作りかつ適切な難易度、十分なボリュームで間違いなく良作ではあるのですが、プレイ時間がそれなりに有ることを考えるとやや散漫としている印象。
パッケージソフトということである程度のボリュームは必要だったのでしょうけれども、個人的には前作くらい詰め込んで濃縮した方が良かったんじゃないかなと。別にフルプライスでも構わないので。
前作、もとよりHalf-Lifeからのファンなら十分に楽しめる作品であるのは間違い無いですが、前作が前作だけにもう少しインパクトがあれば…と思ってしまうのでした。
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